『第728話』 【メタボリック症候群】生活習慣改善に専念を

メタボリックシンドロームが大きく報道されたためか、治療するにはどうしたら良いかという問い合わせがあった。報道は厚生労働省が発表した「平成16年国民健康・栄養調査」による。この内容は厚労省のホームページで見ることができる。

メタボリックシンドロームとは内臓脂肪症候群のことで、内臓に蓄積した脂肪が一因となって高脂血症、高血圧、高血糖などの生活習慣病が重複して発症する新たな疾患概念。昨年4月に日本肥満学会など8学会が診断基準を定めている。

しかし国民健康・栄養調査では、腹部CT(コンピューター断層撮影)などを実施して診断するわけにはいかないので、ウエスト周囲径が男性85センチ以上、女性90センチ以上で▽高脂血症▽高血圧▽高血糖-の二つ以上に該当する場合を有病者、一つに該当する場合は予備軍とし、その人数を推計している。

さて、メタボリックシンドロームを治療する薬は残念ながらない。まずは生活習慣病の治療に専念することだ。それとともに、次の実践をお願いしたい。塩分を控え、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含んだ野菜を多く取り、朝食は欠かさず、脂肪を控えて適切な食事管理を行う。そして禁煙と歯の管理が重要だ。歯の本数が20本以上の人は「何でもかんで食べることができる」と回答した人の割合が多い。虫歯を予防し、治療しておくことも大切になる。

1回に30分以上の運動を週2回以上行っている習慣のある人は成人男性で約30%、女性で25%。60歳を超えると、この割合が高くなる。20~50歳で低いのは子育てや仕事で時間をつくるのが難しいからだろう。意識して運動するように心掛けたい。

厚労省がこうした実態を知らせる理由に医療費の抑制が念頭にないとは言わないが、国民の健康に対する自覚を喚起したいという意図があるのは間違いない。健康維持は強い意志と実行力がなければできない。国民健康・栄養調査によれば、40歳以上で自分の適正体重を認識してコントロールしているのは約50%。40~74歳の5,700万人のうち、有病者が約940万人、予備軍は1,020万人で合わせると34%に上る。

生活習慣病は40歳以上に多い。今回の調査でも男女ともメタボリックシンドロームが強く疑われる割合は40代以上で高かった。その原因が生活習慣にあることを、いま一度確認しておきたい。