『第730話』 【薬剤性光線過敏症】皮膚露出しない工夫を

紫外線が強い時期を迎えた。ある種の医薬品は使用していると紫外線を浴びることにより、日焼けとは違う皮膚の炎症を引き起こすことがある。この副作用を薬剤性光線過敏症という。

微生物や花粉は数百万という非常に大きな分子量を持つ。その表面構造の違いなどにより、どんな抗原(異物)であるかが識別される。人間の体は抗原の侵入を察知すると、これを攻撃する抗体を作る。そして抗原の侵入を阻止し、排除しようと抗原抗体反応が起こって顆粒(かりゅう)細胞からヒスタミン・ロイコトリエン、プロスタグランジンといった炎症を起こす物質を放出する。これが過剰に起こると、じんましんや花粉症のような人間に不都合な疾病となってしまう。一般的に3,500以上の分子量がないと、抗原になり得ないと考えられている。

通常の医薬品で、これほど大きい分子量を持つものはない。大きくても1,000程度だ。しかし薬物が体内に入ると血液中のアルブミンや糖と結合する。血液から体の組織内に移行して、そこにある各種のタンパク質とも結合する。そうすると十分に抗原として認識できる分子量に達する。このように本来は低分子であるのに、ほかの物質と結合して抗原になる物質をハプテン(不完全抗原)と呼ぶ。従って一度、アレルギーを起こした医薬品を再び服用すると危険なので薬剤師が確認し、お薬手帳に記入しているわけだ。

薬剤性光線過敏症を引き起こす医薬品は、抗原になるときに紫外線のエネルギーを必要とする。作用するのは紫外線の中のUVAで波長が320~400ナノメートル(ナノは10億分の1)と長く、ガラスも通過する。

同症を発症させる恐れのある医薬品は多い。フェノチアジン系向精神薬、チアジド系降圧利尿薬、スルホニルウレア系血糖降下剤、ニューキノロン系抗菌剤、テトラサイクリン系抗生物質などだが内服薬だけではなく、湿布剤でも起こる。非ステロイド消炎鎮痛を含有した湿布剤を張った後、屋外で紫外線に当たり真っ赤になって驚く例もある。

こうした薬を使用している人は同症の副作用があるかよく確認して、暑くても長袖の服を着たり、帽子をかぶるなど皮膚を露出しない工夫をしてもらいたい。