『第732話』 【大豆イソフラボン】適量で骨量減緩やかに

厚生労働省が認可した特定保健用食品、栄養機能食品では目的や効果だけでなく、安全に使用するための情報提供が行われている。

先月、内閣府食品安全委員会は大豆イソフラボンを通常の食事に加えて特定保健用食品などで摂取する場合、1日当たりの上限を吸収率の高いアグリコン型で30ミリグラム(配糖体では約48ミリグラムに相当)とすることを公表。妊婦や乳幼児らについては日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できないとした。

大豆イソフラボンは、その分子構造が女性ホルモンのエストロゲンと似ていることから植物性エストロゲンと呼ばれる。女性ホルモン量が少なくなると骨量が減ることが分かっている。そのため骨粗しょう症の予防を念頭に「骨の健康維持に役立つ」という表示ができる特定保健用食品の成分に指定されている。しかし、食品に加えて摂取した場合の安全性について十分な情報が得られていなかったため検討されていた。

通常、大豆イソフラボンは糖と結合していて配糖体と呼ばれる。糖が切り離されるとアグリコン型となる。この部分が女性ホルモンと分子構造が似ていて生理活性を持っている。

妊婦や乳幼児らに推奨しないのは大豆イソフラボンがDNA構造を正常に保つトポイソメラーゼの働きを阻害することや、動物実験で生殖機能への影響が示唆されているからだ。こうした作用は大豆イソフラボンを大量摂取すると起こり得ると報告されている。

過去の国民栄養調査結果で、閉経前後の女性と15歳以上の男性に分けて見た1日当たりのアグリコン型に換算した大豆イソフラボンの平均的摂取量は16~22ミリグラムと考えられる。また最も多く大豆製品を摂取しているグループのデータから、安全に摂取できる量は1日70ミリグラム程度とみられる。さらに150ミリグラムだと子宮内膜症の発症率が有意に高くなるという報告があり、最大75ミリグラムが安全摂取量として設定された。

食品から摂取する大豆イソフラボンに30ミリグラムを加えても多くの人は75ミリグラムを超えない。このたび同委員会が示した安全摂取量を目安に適量の大豆イソフラボンを摂取することにより、骨量の減少程度を抑えることができる。