『第733話』 【水銀】偏った魚の摂取に注意

厚生労働省から「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」と題したパンフレットが送られてきた。「お魚はからだに良いものです」を前提に、妊婦さんに食べる魚の種類と量に気を付けるよう呼び掛けている。

魚は栄養素として重要で動脈硬化を予防するエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸を多く含み、良質なタンパク質や脂質の供給源となっている。しかし魚の一部には、自然界に存在するメチル水銀が食物連鎖によって取り込まれているものがある。メチル水銀は人間の体内にもあり、過剰に心配することはないが胎児には影響が出やすいため、食生活を見直すことが必要だ。こうした魚を極端にたくさん食べるなどの偏った食べ方によって、おなかの中の赤ちゃんの発育に影響を与える可能性が指摘されているからだ。

昭和31年、5歳の女児が原因不明の激しい脳症状を発症し熊本水俣病が公式に確認され、その後に第二水俣病といわれた新潟水俣病問題が明らかになった。平成16年10月、最高裁判所は水俣病の公害問題に対する行政側の責任を認める判決を下した。

水俣病は、有機水銀の一種であるメチル水銀がプランクトンに摂取され、それを小魚が食べ、さらに小魚が大きな魚に食べられるという食物連鎖の中で濃縮され、最終的に摂取した人間の脳神経が侵されることによって発症した。

厚労省はこうしたことを背景に同15年6月に「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項」を公表した。また国際専門家会議で発育途上の胎児を保護しようと体重1キログラム当たりの1週間の許容摂取量が3.3マイクログラム(マイクロは100万分の1)から1.6マイクログラムに引き下げられたため、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼していた。その結果が昨年11月に「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直し」としてまとめられた。

厚労省は特に注意が必要ないものとしてアジ、サバ、イワシなどを挙げている。摂取量を調節する必要がある魚や摂取量についてホームページに掲載している。