『第735話』 【STD】不妊症、骨盤炎の原因に

他人には知られたくない病気がある。感染しているかどうかひそかに心配し、自分には絶対にあり得ないと言い切れないことはその人自身が一番よく分かっている。

医療関係者らには個人情報保護法の制定以前から、刑法によって守秘義務が課せられている。従って職務上知り得た患者らの秘密を漏らすことはない。とはいえ受診者にしてみれば、性病に感染しているかどうか相談したくない人は多いのではないだろうか。

かつて性病予防法という法律があったが、今は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(通称・感染症法)の五類感染症になっている。一般的な呼び方も性病という直接的な言い方からSTD(Sexually Transmiltted Disease)という呼び名が定着してきた。

STDのつち梅毒患者は年間750人程度で推移し、淋(りん)病は20,000人を超えている。性器クラミジア感染症は眼病のトラコーマと同じクラミジア・トラコマチスに感染して起こる。1992年以降は、クラミジアが淋病に代わって最も多い性感染症となった。淋病は精管や卵管に炎症を起こすので、治癒しても炎症部分が癒着して不妊症の原因になる。

クラミジアは、おりものがあったり、不正出血、下腹部痛が起こるが5人に1人は症状がない。感染者は若者に多く、全感染者のうち15~19歳の割合は女性で約20%、男性では約10%で、20~24歳ではその割合が女性で約35%、男性で25%程度に上る。

治療しないと感染領域が広がり、胎盤内に感染して骨盤炎を起こし、さらに肝臓に達して肝炎を発症することもある。淋病と同じように卵管に目詰まりを起こすので妊娠すると子宮外妊娠を招きやすく、新生児にクラミジアによる結膜炎、肺炎が起きることがある。

今はクラミジア、淋菌、トリコモナス・カンジダ、エイズウイルス、梅毒などに加え、子宮頸(けい)がんの原因とされているヒトパピローマウイルスの検査キットもインターネットで購入できる。STDが不安だという人は、利用してみてはいかがだろうか。