『第736話』 【咽頭結膜熱】消毒は塩素剤が効果的

プール熱ともいわれる咽頭(いんとう)結膜熱の感染者が、全国的に今年1月下旬から過去10年間で最悪のぺースで推移している。

県は感染症法に定められた感染症について、決められた医療機関からの報告を毎週集計している。まとめられた情報は、県感染症情報センターからホームページなどを通じて提供されている。

インフルエンザであれば、県に報告している医療機関1カ所当たりの1週間の平均患者数が10人以上だと注意報が出る。これが30人以上になれば警報となり、10人を下回らない限り続く。咽頭結膜熱は注意報がなく、1カ所当たりの平均患者数が1人を超えると警報が出る。そしてO.1人を下回らないと継続する。感染者は10歳以下の子供に多い。

咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因の感染症でA~Fの6群に分類され、血清型で分類すると51種類ある。分離されている約半数がB群に属する三型で感染がら5~7日間の潜伏期を経て38~39度の発熱、咽頭炎と目の結膜炎を起こす。同様の症状を引き起こすC群の二型の検出率と合わせると、この二つの型で約80%を占める。血清型によって症状も異なり、下痢や吐き気などさまざまだ。今は検査キットがあるので、速やかな診断が可能となっている。

治療は対症療法だけで、抗アデノウイルス薬はない。症状が現れてから1週間程度で治る。主な感染経路は患者、感染者からの飛沫(ひまつ)感染や経口感染。プールを介して集団感染する例が多かったため、プール熱という別名がついた。かつては夏季に多かったが通年利用できる温水プールが増えたことや、プール以外での飛沫感染例が増加し、1年を通じて感染者が出る状況になっている。

咽頭結膜熱がやっかいなのは症状が治まった後も約1カ月にわたり、尿や便にウイルスが排せつされるといわれることだ。患者の触ったタオル、ドアの取っ手、手すりなどに付着して感染を広げる可能性がある。消毒は塩素剤が最も効果的だ。エタノール消毒液も使えるが、イソプロパノールや逆性せっけんには抵抗性を示すので使えない。

当会ではプールのシーズンを迎え、学校薬剤師がプールの水の管理について重点的に点検するよう文書で通知し、感染防止を図っている。