『第739話』 【睡眠障害】生活パターンの記録を

高齢者から、「眠れない」「夜中に起きてしまう」「睡眠薬が効かない」といった相談が多く寄せられる。相談者それぞれに生活習慣病などの基礎疾患や生活パターンが違い、適切なアドバイスになっているのか不安なことが多い。また、薬局のように服薬指導を行った結果を確かめることもできない。これも当センターの立場上、仕方がないことなのかもしれない。

「睡眠薬が効かない」という例では睡眠薬さえのめば眠れるはずなのに、なぜ眠れないのかという訴えがある。睡眠薬は病状に合わせて薬が効く時間を考慮し、入眠障害には超短時間型や短時間型、中途覚せいしてしまう人には中間型、朝方早く目覚めてしまう人には長時間型というように使い分ける。

超短時間型や短時間型で薬が最も効いてくる時間は、薬物の血液中濃度が最高に達する約30分から1時間後だ。しかし、この時間帯に心の準備、つまりリラックスしておく必要があることを知っている人は少ない。

薬を服用したからといっても興奮するようなテレビを見たり、本を読んだりしては効果が半減してしまう。ゆっくりとぬるめのお風呂に入り、心休まる音楽を聴こう。照明にも気を使い、アロマセラピーを取り入れるのも有効だ。リラックスを図り、心が寝る準備に入っていなければ薬も効いてくれない。

相談で困ることは睡眠パターンや生活リズムについて尋ねても答えられない人が多いことだ。心配事を抱え、ストレスを受け続けていれば入眠障害を起こす。加齢による体調・生活パターンの変化が中途覚せいの原因となっている場合や、軽症のうつや体内時計が進んでしまって早朝覚せいが起こることもある。この辺をじっくりと調べて改善に取り組むことが必要だ。

そのためには睡眠日誌をつけることをお勧めする。起床や食事の時間、夜中に起きた回数、昼寝の有無とその時間など生活リズムを記録することで、どのような条件のときに睡眠障害が起こるのか手掛かりをつかむことができる。そして心配事があれば、何にとらわれているのか心の分析もしてみよう。

こうして原稿を書いているうちに朝日が昇ってきた。やはり、太陽の明るさは眠気を覚ましてくれる。本日もカーテンで遮光してわずかな仮眠だけとなりそうだが、これでも何とかやっていけるのだから人間はすごい。「何とかなる」といった気楽さも必要なのかもしれない。