『第744話』 【結核】特徴知り早めの治療を

今月24日から30日までは「結核予防週間」。感染症にはさまざまあるが、結核は食中毒を除くと最も感染患者が多い病気で油断できない。

本県は一時、罹患(りかん)者数が増加し、平成2年には49人の死亡者が出た。その後、死亡者数は減少し、15年には12人にまで減っている。同年の全国の死亡者数は2,360人。本県は死亡率では低い方から5番目となっている。

同年の全国の罹患者数は31,638人。このうち東京都と大阪府で約25%を占めている。世界的に見ると日本の10万人当たりの罹患率は23.3人でハンガリーと同程度。先進国ではロシアが86.6人と高く、米国は5.1人。欧州で高いのはイギリスで10.8人、そのほかの国は一けた台だ。数値から見れば、日本は結核患者が多い国ということになる。

なぜ結核は根絶が難しいのか。その理由の一つに結核菌特有の性質がある。結核菌には脂質に富む厚い細胞壁があって殺菌されにくい。さらに乾燥に対する抵抗性が強く、たんとともに排せつされた結核菌は乾燥しても半年、またはそれ以上の年月にわたって感染力を保持し続ける。

感染者の年齢構成を見ると若い世代で低い一方、70代以上が43.9%を占めており、高齢者は特に注意する必要がある。2週間以上せきが出る、たんに血が交ざっている、微熱が続く、体がだるい、胸に痛みを感じるといった症状があれば、早めに受診すべきだ。

薬物治療を行う場合はイソニコチン酸ヒドラジドとリファンピシンの併用療法が基本だが、両剤に対する耐性菌が出現していて問題となっている。WHO(世界保健機関)はピラジナミドを含む6ヵ月の短期化学療法と、医療従事者が目の前で患者が薬を服用するのを確認する直接服薬確認療法(DOTS)を推進している。

結核は根絶が難しい感染症で過去の病気ではない。結核菌は皆さんの周りに必ず存在する。結核の特徴を知って予防、早期治療に努めてもらいたい。