『第748話』 【エビデンス】効能の表示に必要
医薬品は治療を目的としていて、その効果が必ず現れることを前提として考える。解熱剤を投与しても熱が下がらないとすれば、病状や薬の品質的な問題を検討することになる。
特定保健用食品は生活習慣病のリスクを軽減することを期待して使う食品で、予防的効果を目的としている。そのため「血糖値が気になる方に適する食品」「コレステロールが高めの方に適する食品」「血圧が高めの方に適する食品」といった具合に、ある程度の効能を標榜(ひょうぼう)することができる。
昨年2月に健康増進法に規定されている「保健機能食品」の制度の見直しが行われ、特定保健用食品に新しい分類が生まれた。それが条件付き特定保健用食品で一定の有効性が確認されているが、必ずしも科学的な根拠が確立しておらず、科学的根拠が限定的であることを表示するのを条件に許可される。
医療界ではエビデンスの有無が重要視される。この言葉は「証拠・根拠」という意味だ。医薬品や特定保健用食品はエビデンスがなければ、その効能・効果を表示できない。
補酵素の一種であるコエンザイムQ10は、その意味で特殊な位置付けにある。医薬品としての一般名はユビデカレノンで、うっ血性心不全症状の治療薬として1日30ミリグラムを3回に分けて服用する。この効能・効果についてはエビデンスが得られている。一方で、いわゆる健康食品やサプリメントとしても流通していて、その1日の服用量は国内で30~300ミリグラム、米国では1,200ミリグラムまで含まれるものが流通している。
そこで厚生労働省は、昨年8月にコエンザイムQ1Oの安全性に関する食品健康影響評価について、内閣府の食品安全委員会に意見を求めた。今年8月にその回答が出たのだが、科学的な情報が不足していて安全な摂取上限量は明確に決定できないとし、1日30ミリグラムを超える摂取量を目安としている販売事業者に対しては、用量を考慮した長期摂取での安全性確認、摂取上の注意事項の情報提供と健康被害事例の収集を求める内容となった。エビデンスを求めることが非常に難しいという一例だ。
医薬品も病態や生理機能の変化によって、その効果が異なる。主治医やかかりつけの薬剤師が服用後の状態を聞き、効果の確認と副作用が発生していないことを確かめているのは、このエビデンスに沿った状態なのかを確認しているのにほかならない。