『第749話』 【副作用の治療】被害者には救済制度も
医薬品が主作用と副作用を併せ持っていることは広く理解されていると思う。医師の診断によって治療方針が決まり、薬物療法が行われることになると必要な医薬品が処方される。薬剤師は患者から、既往症、過去にアレルギーを起こした食べ物や薬、現在の病態や生活習慣を聞き、処方された医薬品を適正に使用するための基礎情報を収集。調剤した薬を渡す際、それを基に注意すべきことなどを伝えている。
患者の情報が医師、薬剤師、患者自身の間を循環し治療に還元されることが、医薬品を適正に使用する上では欠かせない。
とはいえ、常に高血圧や糖尿病といった慢性疾患で医師の診断を受け、調剤した薬を使用しているわけではない。風邪や腹痛、頭痛などの急性期疾患では、時間的余裕がないことなどからOTC(大衆薬)を使う人も多く、添付されている説明書に記された情報だけで薬を使うこともあるだろう。
しかし、時として薬は適正に使用しても突発的に副作用を起こすことがあり、原因が明確でないケースもある。そこで副作用の治療に必要な医療費を医薬品製造業者らが負担する医薬品副作用被害救済制度が設けられている。
対象となるのは、薬を適正使用したのに入院が必要な程度、あるいは日常生活に著しい支障が出る程度の副作用が出たケースで、亡くなった場合も含まれる。また副作用は既知のものも入るが、がんやそのほかの特殊疾病に用いる医薬品が原因の副作用は除外される。
手続きは、まず被害者本人や遺族が医療費の給付請求書、添付資料(医師の診断書など)を医薬品医療機器総合機構に送付。同機構は、その健康被害が薬の副作用によるものか、薬は適正使用していたかといった判定をしてもらうよう厚生労働大臣に申し出る。厚労相は薬事・食品衛生審議会(副作用被害判定部会)から意見を聞いて判定をくだし、それを基に同機構が給付の可否を決める。同機構の決定に不服な請求者は、厚労相へ審査を申し立てることができる。
薬を使用するに当たっては、患者を中心として医師や薬剤師が医療・医薬品情報を共有し、医薬品を適正に使用することが第一。その上で現状では回避できない副作用の被害を同制度がカバーするという構図になっている。もしものときに備え、こうした制度があることを知っておいてほしい。