『第750話』 【服用時点】効果を引き出す基本に

朝起きてから睡眠薬を服用する人はいないだろう。その理由は言うまでもない。薬の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるには服用する時間(服用時点)を守ることが基本になる。生活習慣病の治療薬も、なぜ食事の直前や夕食後に服用しなければならないのかを知り、決められた時間に服用しないと効果が得られないばかりでなく、副作用が強く出てしまうことさえある。

糖尿病の治療薬の一つにα-グルコシダーゼ阻害薬がある。成分名はボグリボースとアカルボースだ。

米飯やパンなどの炭水化物(でんぷん)は糖質の基本となる単糖を構成成分とする有機化合物で、人はその単糖の中でもブドウ糖(グルコース)を利用している。生命体にとってブドウ糖は非常に重要で、動物や植物の生命を維持するエネルギーとして使われる。このため植物はでんぷんとして、動物は肝臓にグリコーゲンとして蓄えている。

α-グルコシダーゼは各種の消化酵素によって二糖類にまで分解された炭水化物を、さらにブドウ糖など単糖類にする働きをしている。その働きを抑え、小腸から吸収されないようにして高血糖になるのを防ごう-という発想でα-グルコシダーゼ阻害薬が誕生した。

インスリン非依存型糖尿病の患者には食事療法と運動療法が不可欠だが守れない人もおり、この薬は特に食事管理ができない人に向いているということになる。薬の働き方からして、食事の直前に服用しないと十分な効果が得られない。

α-グルコシダーゼ阻害薬は、それだけでは糖尿病管理が不十分で、血糖値を抑える別の薬を併用していることが多い。この治療中に低血糖を起こしたときには砂糖をなめても、すぐに回復しないことがある。砂糖は単糖類のブドウ糖と果糖が結合した二糖類だからだ。この場合はブドウ糖が必要になる。

また高脂血症薬の中には、コレステロールの合成が睡眠時に促進されるので、夕食後に服用する種類もある。

薬を使う際は、薬剤師にその作用を明確に説明してもらい、時間を守って使用してほしい。