『第751話』 【うつ病】周囲の理解、克服の契機

「辛(つら)い」の漢字に「一」を足すと「幸い」になる。うつ病を克服した司会者の小川宏さんは、友人から「つらいだろうけどあと一息でそれが幸せに変わるから頑張れ」と書いた手紙をもらい、とても励まされたという体験談を語っている。妻を亡くしたことをきっかけに発症したうつを克服し、その手記を出版したのは気象キャスターやエッセイストとして活躍する倉嶋厚さんだ。

うつ病は決して珍しい病気ではない。当センターにも、うつ病の薬を服用している人からの相談電話は多い。うつ病になった経験のある女優の音無美紀子さんも語っている通り、性格的に頑張り屋で負けず嫌いの人、またきちょうめん、まじめ、悲観的な見方をしがちな人も、うつ病になりやすい傾向がある。一人で苦悩を抱えて口にすることができなくなり、自分の殻に閉じこもるようになると危険信号だ。

「人の痛みよりも自分の小指に刺さった小さなとげの方が痛い」のが人間の本質。たとえ家族でも、他人の真意や本心をくみ取るのは難しい。「そのぐらいのこと-」「誰にでもある」といったように悩みを真剣に受け止めてもらえず、逆にストレスになるような言葉を受けるとその場所にいられなくなり、病状が一段と悪化する。

その点、音無さんの夫である俳優の村井国夫さんは違っていた。ある晩、布団に入ってきて、そっと音無さんの手を握り「何もしなくていいから、ただ僕のそばにいて、子どもの成長を一緒に見守ってほしい」と語りかけたそうだ。この言葉が、うつ病を克服するきっかけになったという。自分を理解してくれる人の存在を確認することは生きる意欲につながる。

うつ病を早期に発見するには、兆候があったときに「いつもと違う」という直感を持つことが家族ら周囲の人々に求められるが、うつ状態であるか否かを常に意識し、早い段階で見つけるのは難しいかもしれない。病的なものなのか判断がつかないこともあるだろう。

当会が今月23日午後1時から、秋田市の秋田拠点センター・アルヴェで開く県民公開講座では、県医師会副会長の斎藤征司・さいとう神経科クリニック院長から、うつ病とはどのような病気なのか解説してもらう。また、うつ病を発症した夫・高島忠夫さんを看護した女優の寿美花代さんから体験談をお話ししてもらう。入場無料。ぜひ足を運んでもらいたい。