『第752話』 【マイコプラズマ肺炎】手洗い、うがいで予防を

県健康推進課から感染症週報がメールで送られてくる。この情報は、当会のメーリングリストに加入している会員に送信しており、薬局では常に感染症の流行に注意を払っている。

各薬局からは、マイコプラズマ肺炎と感染性胃腸炎が流行してきているという情報が入っている。感染症週報のデータでもマイコプラズマ肺炎の患者数が過去にないほど急激に増え、感染性胃腸炎も例年より流行が早まっていることからも、このことが裏付けられる。

マイコプラズマ肺炎の病原体は細菌に分類され、自己増殖できる最小の微生物だ。これよりも微小のウイルス、リケッチア、クラミジアは生きた細胞の中だけでしか増殖することができない。

細菌の外側は細胞壁と細胞膜の二層から成る。しかし、マイコプラズマ肺炎の病原体であるマイコプラズマ・ニューモニエには細胞壁がない。このためペニシリンやセフェム系のように、細胞壁の合成を阻害して細菌を殺菌する抗生物質は効かない。従ってDNAの合成を阻害するニューキノロン系、細菌のタンパク合成を阻害するマクロライド系を使い、学童期以降であれば同様にタンパク合成を阻害するテトラサイクリン系の抗生物質も使用できる。

診断には胸部エックス線撮影、マイコプラズマ肺炎に特異的なIgM抗体を迅速に検出するキットを使った検査を行う。乾いたせきが出て徐々に強くなるのが特徴で、せきは熱が下がっても続く。

ニューキノロン剤は中枢神経を興奮させる作用を持っている。非ステロイド系抗炎症剤と併用すると、この作用が強く出てけいれんを誘発することがある。また、光線過敏症が現れることもあるので注意が必要だ。

一方の感染性胃腸炎はノロウイルスやロタウイルス、食中毒の原因菌などによって起こる胃腸炎の総称。発熱、咽吐(おうと)、下痢、腹痛といった多様な消化器症状が見られる。下痢があれば水分補給が欠かせない。

どちらの感染症も予防するには、日ごろから手洗いとうがいを心掛けるしかない。うがいは水で十分だ。今は、インフルエンザワクチンの接種時期でもある。冬に向かって呼吸器・消化器の感染症予防の準備が必要だ。