『第754話』 【新薬の治療】患者自身も知る努力を

米国の一般雑誌には、新しい医療用医薬品の広告が掲載されている。中には日本では発売されていない医療用医薬品の広告や、専門家に提供されている情報と何ら変わりのない内容もあって、薬に寄せる関心の高さや広告の在り方の違いに驚かされる。日本では、一般雑誌に医療用医薬品の広告を掲載することが制限されている。しかし薬を知る上では、こうした広告が一般雑誌に掲載される必要があるのではなかろうか。

さて、こうした米国の雑誌で見かける新薬の広告に、降圧剤と高脂血症薬の成分を組み合わせ、一つの錠剤にしたものがある。今までは、それぞれを一錠ずつ服用していた。しかし新たな薬は一錠に二成分が入っているので服用の手間が省け、飲み忘れが起こりにくくなるといった利点がある。メーカーはデュアルセラピー薬(二重の治療薬)と呼んで宣伝している。

なぜ二成分が一緒になっているのか、その理由や効能・効果に加えて、注意すべき点や副作用もしっかりと書いてある。病気を知り、その薬物治療を患者自身がしっかり勉強してリスクを把握した上で、自己責任を持って治療に専念する前向きな姿勢が芽生えるのではないかという印象を受ける。

米国で多い心血管疾患では、高血圧と高脂血症の治療が必須になる。10月に開催された国際高血圧学会では、LDLコレステロールの高い高血圧の人がこの両方の疾病を治療することによって、心血管の異常から起こる症状を10年間にわたって半分以下に抑えることができる-と発表されている。日本でも米国型の食生活が広がり、心血管疾患が増加しているので注目しておく必要がある。

日本でも、こうした合剤型の新薬が初めて発売された。ARBと呼んでいる降圧剤と少量の利尿型の降圧剤を組み合わせた薬だ。それぞれの降圧作用の利点を引き出し、副作用を少なくできる。

医療用医薬品の研究が進み、どんな成分を、どの程度の量で組み合わせると効果的なのかが分かってきた。こうした薬を使いこなすには、患者自身が薬を知って治療に積極的に参加することが大切だ。