『第757話』 【感染症予防】十分な休養、栄養が重要

昨年末から、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が大流行している。患者発生数が例年より約1カ月早い11月から増加し始め、確かにその兆候はあった。とはいえ、ここまで集団発生が全国各地で起こるとは予想外だった。今はやや落ち着いてきているが、いったんピークを迎えてから2~3月に再び流行するパターンを毎年繰り返しているので、手洗いなどの予防対策はしっかり実行しよう。

一方、インフルエンザウイルスの活動は、全くといっていいほど静まり返っている。それが予防注射の効果なのか今のところ判断はできない。

感染症はその菌種、病原性、感染源、感染経路、人の体力などによって危険度や予防法が異なる。ノロウイルスとインフルエンザウイルスであれば、インフルエンザウイルスの方がより危険といえる。その理由は感染経路にある。

ノロウイルスの感染経路は経口感染や飛沫(ひまつ)感染のほか、しっかり処理されず床などに残った吐しゃ物や便が空中に舞い上がり、感染する。一方、インフルエンザウイルスはこれらに加え、長期間にわたって空気中に漂い感染を引き起こすので、感染範囲が大きく広がる。従ってノロウイルスの感染範囲を最小限にするためには、汚染個所の消毒や1週間程度ウイルスが排せつされる感染者の便の管理などをしっかり行えばよい。

菌種を大別するとウイルス、リケッチア、クラミジア、細菌、寄生虫となる。細菌類よりはウイルス類の方が危険だ。なぜなら細菌による感染症であれば抗菌剤などの薬があるが、ウイルスそのものを効果的に殺すことができる薬はいまだにないからだ。

しかし抗菌剤も効果があるからと多用したために、抗菌剤が効かない耐性菌を生む結果を招いている。同様に抗ウイルス薬に対する耐性ウイルスの出現も報告されている。

感染症予防には体力を付けることが最も重要だ。十分な栄養と休養によって免疫力が高まる。人が備え持つ抵抗力はウイルスさえも殺してしまう。幸いにしてノロウイルスは健康な人であれば、感染してもそれほど重症化しない。ただ、その感染源は明らかに過去の状況と異なっており、カキや二枚貝などの貝類ではなく人が感染源になっている点に注意したい。

インフルエンザも栄養と休養が第一。免疫力を高め、手洗いやうがいも行って流行期を乗り切ってもらいたい。