『第759話』 【健康情報】疑問は専門家に相談を

薬や健康食品、疾病について、薬剤師など身近な医療専門家より、テレビ番組やコマーシャルを信用する人が多い。そうした番組などでココアが健康に役立つと紹介されれば、店頭からココアが消える。ワインにポリフェノールが含まれているといわれると、毎日ワインを飲む人が出てくる。1970年代の石油ショックのときにトイレットペーパーを買いに走った行動心理そのもののように思える。

一時期、注目された紅茶キノコや尿療法はどこへ消え去ったのか話題にも上らない。にがり痩身(そうしん)法で下痢が止まらなくなるなど健康被害が出ても検証番組が制作されることはない。インターネットの世界に入れば玉石混交の「情報の海」が広がっている。時には専門家側に問題があることもある。遺伝子科学や考古学の分野では、捏造(ねつぞう)事件が発覚した。では一体何を信じればいいのか-ということになる。

毎週、本欄を書くにあたっては日ごろからあらゆる分野に目を向け、世相や世論に敏感になり、新鮮な情報を収集しておくようにしている。テーマが決まれば資料と突き合わせて検証する。一口に資料といっても自ら実験して得たデータを考察し、論文とした一次資料、論文の概要を集めてまとめた二次資料、これらを加工・編集し書籍などにまとめた三次資料がある。

二次・三次資料に科学的根拠が見いだせるかどうかは、一次資料までしっかり戻れることがポイントになる。そして一次資料が科学的根拠に根差した客観的内容かを再度、吟味しなくてはいけない。その一次資料の内容と同様の一次資料が多くあれば確定的常識となり、資料として使える。この一連の検証作業を怠らないようにしている。

メディアは正しいという信用を得ている。しかし一方で、残念ながらそこに興味を持たせるためのあってはならない演出が行われていたことがあるのも事実であり、怖いところだ。

薬や健康食品、疾病に関する情報が正しいか否かを判断する目は自分自身で育てていくしかないが、一般の人が、自分一人の力でその情報が科学的根拠に根差し、信頼できるものなのかを見極めるようになるのは難しい。私たちは確かな目を養っていく上で、できるだけお手伝いできればと思っている。疑問があれば、薬剤師など身近な医療関係者に相談してほしい。