『第763話』 【服薬】添付文書の副作用確認
間もなく3月になる。小学校入学を控えた新1年生のいる家庭では、入学準備を進めていることだろう。3月1日~7日は「子ども予防接種週間」だ。入学前には予防接種も忘れずに受けよう。麻疹(ましん)と風疹の混合ワクチンは2回の接種になっていて、対象は1回目が1歳児、2回目は5歳以上7歳未満で小学校入学前の1年間となっている。これを過ぎると市町村から補助が出る定期の予防接種として受けられなくなってしまう。
さて、流行が例年に比べ2カ月以上遅れて、インフルエンザの患者が増えてきている。今月16日、インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名タミフル)を服用し。た可能性がある愛知県の女子中学生がマンションから転落死した。それを受け、当センターには服用しても大丈夫かという問い合わせがあった。
2005年11月に米国食品医薬品局が評価依頼した小児諮問委員会、同月の日本小児科学会の見解、また厚生労働省が06年1月に開催した薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会などでは、タミフルの服用とその後の異常行動などによる死亡例に因果関係を示す証拠はない、安全性に重大な懸念はないとしている。05年度厚生労働科学研究「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」では、異常行動の発現についてタミフル使用群と未使用群との間に統計学的にも有意差がないと報告している。
そうした同省などの見解に反発するように「薬害タミフル脳症被害者の会」が発足し、活動している。異常行動などによる死亡例に関してはインフルエンザ脳症との関係も否定できないが、タミフルの服用後、そのような事態に陥った子どもの家族らにしてみれば、安全性に大きな疑問が残るだろう。
薬には副作用があり、興奮を静める鎮静剤では約半数に眠気が出る。これは薬が効いている証拠で、あまり問題にならないが、生命に危険が及ぶ場合は十分に考慮して使用しなくてはいけない。タミフルの添付文書には、副作用として意識障害などの精神障害が出ることがあると書かれている。現状では、使用後に異常行動が現れる可能性があると認知し、子どもの場合は服用後、事故が起こらないように保護者が見守る必要がある。
感染症の発症防止には予防接種が第一。ワクチンの接種にも副反応はあるが、感染症を発症したときよりも安全性は高いと考えられる。薬を使うときには「効果」と「安全性」をてんびんにかけざるを得ないのが実情となっている。