『第765話』 【バリアフリー社会】筆談ボードの設置推進

医療は、病気を治療すれば終わりというものではない。手術後に障害が残ったり、継続した介護を必要とする場合もある。そうした病気を患った人が生活していく上で妨げとなることが社会にはいくつかあり、取り除いていかなくてはならない。

友人が大腸がんの手術を受け、人工肛門(こうもん)をつけてから1年半が経過した。外見上は元気に社会復帰しているが使用しているものが体に合わないようで、違う製品に変えたいと相談を受けている。

「人工肛門、人工ぼうこう」=「がん」と連想する人もいるようだが、クローン病などの炎症性腸疾患、腹部血管障害によっても必要になることがある。

人工肛門や人工ぼうこうをつけているオストメートが安心して暮らせる社会の実現を目指し活動している日本オストミー協会のホームページでは、オストメート対応トイレの設置の必要性が訴えられている。

オストメートは排せつ物を一定時間ごとに廃棄するため、腹部に装着した排せつ物の入るパウチと人工肛門の周辺を洗浄するなどしなくてはならず、その設備が必要になる。オストメート対応のトイレの入り口には、腹部に十字が入った人の上半身のマークが掲示されている。全国の公共施設の身体障害者用トイレにオストメー卜用の設備が備えられるようになってきてはいるが、まだ少ないようだ。

また、色覚障害者では緑と赤の区別が難しいが、信号機はずっと変わらないまま。点字や音声案内が備えられている所があるぐらいだ。

先日、県内の薬局に「耳マーク」と筆談ボードを設置してほしいと、県難聴者・中途失聴者協会の代表者が当センターを訪れた。耳マークは聴覚障害者であることを示し、指さしてもらえば耳が不自由だと分かる。

年齢を重ねてから聴覚を失った人は、健常者と同じように発音できる。そのため障害があるのが分かりづらく、医療機関などで呼ばれても黙って座っているので、おかしな人だと誤解されるケースもあるそうだ。耳マークの社会的認知度は十分とは言えず、筆者も、この時に初めて知った次第だ。代表者からは、診察の順番や処方された薬が調剤されたことを聴覚障審者に知らせる方法として、振動する機器を使う方法もあると聞いた。

要望を受け、当会ではバリアフリー社会実現の一助になればと、まずは各薬局で耳マークの表示と筆談ボードの設置を進めている。