第03回「睡眠の重要性と、よりよい眠りのために」

平成14年12月08日(日)

14:00~15:30

県総合保健センター2階

菱川泰夫

秋田大学名誉教授(医学部・精神科学)、秋田回生会病院・院長

人類は、24時間周期で変化する地球上の環境で、昼間は目覚め、外敵から逃れ、食物を獲得し、さまざまな社会的活動を行い、夜は安全な場所で休息と睡眠をとり、長期に渡って生きのびてきた。夜の睡眠は、さまざまな苦痛や悩みを一時的に忘れさせてくれるだけではなく、心身の疲れをとり除き、翌日にしっかりとした目覚めと活力を生み出すのに役立っている。夜によく眠れないことは悩みになるだけでなく、不眠が続くと心身の不調が起こり、それが仕事上のミス、交通事故、産業災害などを起こす原因になることが多い。1日の平均的睡眠時間は5~10時間と個人差が大きいが、7~8時間の人が最も多い。しかし、長時間にわたって寝床に横たわっていても、思い通りに長く眠れるものでもない。1日の平均睡眠時間が7時間の人達の死亡率が最も低いとする報告もある。わが国では約20%の人達が何等かの睡眠障害を患っている。最も多いのが不眠症である。居眠りを繰りかえすことが特徴の過眠症(ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群)もある。24時間社会と呼ばれる現代では、著しい夜型生活による睡眠不足症候群や交代制勤務などによる概日リズム睡眠障害を患っている人が増加して来ている。睡眠をめぐる最新の研究成果をふまえ、睡眠の重要性と、よりよい眠りのための方策を説明したい。